2006/8/18-19 沙流川洪水
沙流川岩知志ダムの
危 機 的 状 況
2006/8/28 アップロード
2008/1/9 更新
岩知志ダムは、沙流川の河口から50kmほど上流に建設された
北海道電力の発電ダムです。岩知志ダムは、堤高33m、堤頂長92.2mと、ダムの高さは二風谷
ダムとほぼ同じで、幅は1/5ほどの大きさです。
2006年8月下旬のある日、岩知志ダムです。
でも、なぜか普段とは様子が異なるようです。
ダム上の機械室に、「何か」が覆いかぶさって建物が壊れています。
放流ゲート部には、ぎっしりと金属の塊と流木が入り込んでいます。
この鉄骨はいったい何なのでしょうか?
ダム上流がわの様子です。
巨大な物体が、上流からダムゲートを塞いでいます。8月18日〜19日の大雨洪水の際に、ダム湖に係留してあったクレーン船が漂流して転覆、ダム堤体に衝突したということ。
クレーン船の台船は、大きく3つに折れ、上面を上流側に向けて堤体にかぶさっています。この上に載っていたはずのクレーンは、大破してゲートの中に入り込んでいます。どうしたらこのような状況になるのか、ちょっと想像がつきません。
堤体上の機械室等も幅広く壊れており、クレーン船が衝突を何度も繰り返していたことがわかります。
ダム堤体には、強い衝突によるとみられる亀裂が生じています(「危ない!」の看板の右)。また、両岸の堤体天端には流木が乗っており、クレーン船がゲートを塞いだために、適正な放流を行うことができず、ダムの上を洪水が乗り越えて流れ出す「堤頂越流」を生じていたことがわかります。
放流ゲートによらない堤頂越流は、ダムの設計上考慮されておらず、越流を生じると、ダムは決壊するおそれがきわめて大きくなります。
3つのゲートは全開のまま操作不能です。
しかも1番、3番ゲートには、大破したクレーン船が詰まっており、放流量の制御ができない、きわめて危険な状態となっています。この状態で、先の洪水中にダムが決壊しなかったのは、不幸中の幸いでしょう。
ゲートにはまりこんでいるクレーン船をうまく撤去しても、ダム本来の安全性が確保されるようには、とても思われないのですが…。(撤去作業中に次の洪水が来たらどうするのでしょう?)
北海道電力は、このクレーン船転覆事故に対し「オイルが流出するおそれ」のみをアナウンスし、洪水中のダムとしての危機的状況、そして、洪水後の正常なゲート放流不能かつダムの安全が確認されない危険な状況を、流域住民や、顧客である北海道民には一切知らせていません。
北海道電力と、沙流川の河川管理者である北海道開発局、北海道は、この転覆及びダム破損事故について、国民に事故の全容を説明し、十分な安全を確保する義務があるはずです。
【岩知志ダム・その後】
2007年1月中旬、クレーン船の衝突事故から5か月たった岩知志ダムの状況です。
壊れた機械室、3番ゲートが撤去されています。残されているゲートも使用できない状態。
事故の後、再度の洪水が生じていないのは幸運です。
この事故の全容については、一切明らかにされていません。
※事故から1年以上たった2007年10月より、岩知志ダムの運用が再開されているようです。